■ 男の記憶──00

「…………ここ、は?」
男は目覚める。
眼前に広がるのは暗い海と星が瞬く夜空。
辺りを見渡すが──…そこは記憶にない孤島だった。
──男は何故だか思い出せない。己の状況を。
「ふむ。どうして私は見知らぬ浜辺に倒れているのでしょうか?」
暫し夜空を眺めながら熟思していると、ぽろぽろと星が流れる度に記憶も甦ってきた。
全てではないけれど。
『そうだ、仕事の関係で乗っていた船が嵐に合い難破したのだ』と。
たしかそうであったと男は認識している。
ただ、己はどんな仕事に就いていて、何処に向かつもりだったのか、または帰路の途中だったのか。
そういった詳細な部分は思い出せないまま。脳に霞がかかっているよう。
それ以外にも、様々な記憶が抜け落ちてしまっている感覚に襲われている。
それでも、男の足元が揺らぐことはない。
生きているのだから。
まだ助かる道はあるかもしれない。
それでもどうしようもなく行き詰ってしまえば……
終わりをを受け入れればいいだけの事。
己の魂を"次"に送り出す心構えはいつでも出来ていたはずだから。