Eno.364 サトル

■ 男の記憶──00

「…………ここ、は?」



男は目覚める。


眼前に広がるのは暗い海と星が瞬く夜空。


辺りを見渡すが──…そこは記憶にない孤島だった。













──男は何故だか思い出せない。己の状況を。


「ふむ。どうして私は見知らぬ浜辺に倒れているのでしょうか?」




暫し夜空を眺めながら熟思していると、ぽろぽろと星が流れる度に記憶も甦ってきた。
全てではないけれど。


『そうだ、仕事の関係で乗っていた船が嵐に合い難破したのだ』と。


たしかそうであったと男は認識している。


ただ、己はどんな仕事に就いていて、何処に向かつもりだったのか、または帰路の途中だったのか。
そういった詳細な部分は思い出せないまま。脳に霞がかかっているよう。


それ以外にも、様々な記憶が抜け落ちてしまっている感覚に襲われている。





それでも、男の足元が揺らぐことはない。

生きているのだから。
まだ助かる道はあるかもしれない。
それでもどうしようもなく行き詰ってしまえば……









終わりをを受け入れればいいだけの事。
己の魂を"次"に送り出す心構えはいつでも出来ていたはずだから。