■ オ
釣りが出来るようになった。

「ウォオオオオッ!!
魚が今ならタダで無料ッ!!」
釣っては焼いてを繰り返しバクバク食っている。
* * *

ツヤツヤ……
胃が満たされたノイグエントは最早薄汚い借金ドッグなどでは無かった。
艶やかな毛並み、風格と余裕のある表情、まさにゴールデンカリスマセレブと呼ぶに相応しいオーラを放っていた。
本人はそう思っている。

(……帰るよりここで暮らした方が毎日飯いっぱい食える気がする)
漂流前よりも圧倒的に食生活が良くなっていた。
そしてもう一つ気づいた事がある。
無人島には経済が無い。金があっても使う事は出来ないが、逆に言えば……

「そう……借金の返済からも解放されるという事……」
ノイグエントはここが一種のユートピアであると考え始めていた。
* * *
だがこの孤島には娯楽が無かった。
都会の煌びやかさを知った今となってはあまりにも原始的過ぎる生活だった。

「そう、おれはもう知ってしまった……。
手渡しされた給料片手にパチスロやカジノに足を運ぶ時のあの高揚感を……。
負けたら借金が増えるリスクに精神がヒリつくあの緊迫感を……」

「だから……おれは帰るんだ……。
また毎日パンの耳生活になろうと、借金で苦しむ事になろうと……
あの煌びやかな都会に……!」
* * *

「というか数十日持たず沈むってさいしょの便箋に書いてあった……。
最初から帰る以外の選択肢は無かったんだ……」
釣り竿を片付け、焚火の始末をして
いそいそとまた探索へと出かけていく……。