Eno.633 コトウモリペンギン

■ ペンギン

ペンギンは写真を撮影した。
もちろん、偶然である。
落ちていたポラロイドカメラを踏みつけたペンギン自身は、そのシャッター音にたいそう驚いて、一目散に逃げ出した。
撮影した写真には、森の地面が写っていた。

ジーランティスの島々には、人工物が多く存在する。
海を介して、他の世界のものが漂着するのだ。
一般的な漂流物との違いは、森にもそれらが落ちていることだろう。
この世界の島々は、満潮を迎えると、島一つが丸ごと海底へと沈んでしまう。
そして再浮上する際に、多くのものを引っ掛けてくる。

この島にもかつて、人間が流れ着いたことがあるのかもしれない。
しかし今、かつて訪れた誰かが残した文明を喜ぶ者はいない。
ペンギンが奇跡的に撮影したこの写真も、誰にも見られることなく、海上を漂う朽ちた紙の一つになっていくことだろう。