Eno.108 アノーヴァ・ピィヴァル

■ 《13: アノーヴァ・ピィヴァルの日記 - 狩猟》

森に仕掛けておいた罠に、さっそく野生の鳥がかかっていたのでくわえて帰る。
……閉じ込めておけるものを用意してくればよかったか。リーバさんに手間をとらせてしまった。
ともかく上手くいったのは大きい。水と食料の供給が安定すれば、もっといろいろなことに時間を使えるはずだ。

生き物の締め方を知ったのは、外へ出てきてからのこと。
氷の迷宮で過ごしていたころに物語の本で読みはしたが……それは理解とはほど遠いと、今となっては思う。

島に取り残された少年―――ちょうど今の私達のように―――その子がどうにか鳥を捕まえて、殺して食べる場面があった。
描写の迫真さもあったのだろうけど……その時の私は、かわいそうだ、と思ってしまった。

私だって、迷宮に置かれる前には自力で獣を獲って食べたことはある。
でもその時はただ、喉笛にかみついて、それだけだった。
……きっと、その時の私は獣になりきっていて、ニンゲンの心を封じていたのだろう。
かわいそうだと思うのは愚かではあったが、ニンゲンとして、命をいただくということを見られるようになったことでもあるのだと思う。

ニンゲン。
どんな姿で、どんな手段であっても、心を通わせられる者たち―――いや、そうする意思を持つ者たち全てを、オルタナリアではそう呼ぶ。
私は、ニンゲンだ。この島の皆も。