Eno.145 小森山エレサ

■ 無題

――その日、小森山エレサは自分が布団の中に入ったと思ったら砂浜に倒れていることに気付いた。
身体は無事、声も出る。夢かと思ったけど、別にそんなことはなさそうで。

「青い空、大自然、ここがきっとお祖父様が言ってた島ね!
でもどうして私がこんなところにいるのかしら!」

とりあえず元気よく言ったものの、エレサにお祖父様はいないし島のことも知らない。
小森山エレサはいいとこのお嬢様ではなく、架空のお嬢様キャラに憧れる一般女性である。
そして、こういうときこそお嬢様たるもの元気に慌てず余裕を持ったほうがいいと思った。
……実際は普通に不安だったし、どうすればいいのよこの状況はと思っていた。

しばらくポーズを取ったあと、エレサは持ち前のフィジカル・ポジティヴ・ハートで、とりあえずなんとかなるんじゃないかと思い始めた。サバイバルとかしたことないけど、周りに(知らない)人はいるし森はあるし、探さばなんか落ちてるような気がするし。小森山エレサはこう見えてめちゃくちゃ楽観的な人間である。
近くに落ちてた自分の鞄を覗き込み、入っていた小型の懐中電灯にありがたいなあと思いながら、彼女は砂浜を見渡していた――。