Eno.108 アノーヴァ・ピィヴァル

■ 《18: アノーヴァ・ピィヴァルの日記 - 記憶・2》

雨が屋根と地面とを打つ。
横になって、そのリズムに身を任せていると……私の意識はまた、心の内側へ潜っていく。
思い出せずにいたことに触れようと……

タカアキが私を引っ張り出すきっかけとなった、オルタナリアの危機。
それはバケモノの増殖のこともあるが……ディナイア教団の台頭に端を発するものだった。

教団の構成員―――否徒(ひと)。ニンゲンでありながら世界を憎み、バケモノを崇拝する者たち。
彼らは姿を隠し、市井に紛れ込み、弱い立場にいたり悩みを抱えた人々を誘い込み、自分たちの味方にしてしまう。
そうは言っても大抵は、組織の外におかれたまま操り人形にされるだけ。
否徒になり、教団の秘密に触れられるのはほんの一握り……自らの意思でバケモノに変じる力を身につけられた者だけなのだ。

……そもそも、バケモノとは。
神話においては、私たち始祖竜が人知れず封じ込めてきた、悪しき存在とされていたけれど……本当は違う。
生き物が死ぬときに、魂のエネルギーとでもいうべきものを使い切れないまま死ぬと……それがバケモノに変じてしまうのだ。
……それはすなわち、己の『真に願う姿』で生きられなかったということでもある。
草木や獣は、いつも自然の成り行きのままに存在しているから、めったにバケモノにならない。
だけど、ニンゲンは葛藤する。努力し、悩んだ先にしか、自分の姿は見つけられない……でも誰もがそれをできるとは限らない。
そうして未練のうちに死に……バケモノになってしまう。
バケモノがニンゲンを襲って食べようとするのは、身体を取り戻して、未練を晴らそうとしているからなのだ……

そのバケモノに自らなることができる否徒とは、どういう存在なのだろう……
彼らは、バケモノが……とりわけバケモノの王・ディナイアこそが、真の神だと言っているけれど……

タカアキと、他の勇者たち……ナオキミキ……それから……あと一人は……
私が出てきた時にはすでに多くの否徒を倒していた。
その中には……

……今は、ここまで……