Eno.500 七海 ナナ

■ 折れない魂



無人島に流れ着いた。
水が足りない、足を挫いた。
岩場から落ちた

そんな経験も全部――…





「アタシのロック魂の糧でしかないなっ!」





音楽馬鹿には、メロディがある。
歌がある。そして、彼女は自分の歌声がどこまでも響くと信じてる。



「今日もいっちょやるか…
今日はロックンロール!アタシの歌を聴けぇっ!」




毎日、朝・昼・夜…
砂浜へと足を運んではメガホンで声を海へと飛ばす。

狼煙が視覚で救助を呼ぶなら、音楽馬鹿は聴覚で呼んでやろうっと
そうでなくても拠点より船や飛行機を見つけやすい筈だ。



吸い込んだ空気を吐き出す様に

地平線へと声が響く、音が響く
それは彼女の気力が続く限り……いや、救助が訪れるまで毎日繰り返される。

音楽がある限り、その心は折れない。