Eno.451 マギサ

■ 異常事態の時こそ冷静に

最初は金属材を探しに岩場へ行ったんだが、ふと、

『ドラム缶が流れ着いているかもしれない砂浜を探した方が良いのでは?』

と思い、砂浜に赴いた。

――怪我をして砂浜に打ち上げられた人魚の小娘が倒れていた。

駆け寄って小娘の状態を見てみたが、間違い無く生命の危殆に瀕していた。
勝手に拠点から持ち出した即席医療セットを使って応急処置を施し、少し様子を見ていたが、そこへ追い討ちをかけるように雨が降り出した。

此処で死なれては困る。
ただでさえこのだだっ広い島にたった五名の遭難者、ひとつでも欠ければ……恐らく、いよいよ首が回らなくなる。
それに、あたしはただ生き延びる事さえできれば良いが、他の連中は揃ってお人好しだからね。
死んでしまえば、きっと悲しみに暮れるだろう。
そうなれば、連鎖的に崩れていき――最後に待つのは〝全滅〟のみ。
それだけは、どうしても避けねばならぬ。

一旦急いで拠点へ戻り、即席医療セットをもう一セットと、いくらかの食料を倉庫から出して持っていく。
どうもその時の音で、眠っていたアノーヴァが目覚めてしまったらしく、小娘に更なる応急処置と、無理矢理にでも食料を詰め込んでいたところへ様子を見に来た。
そして、小娘の状態を見て、焦りと絶望の表情を浮かべた。
近くを泳いでいたイカに、なんとなく拠点へ連れて行くように勧められた気がして、アノーヴァと共に拠点へと小娘を抱いて戻る。
そこで呑気に雨に喜んでいた鳥……蝙蝠か……? いやとにかく拠点へ帰って来ていたので、即席医療セットをいくつか作っておくように頼み、パニック状態になっているアノーヴァを落ち着かせてから、小娘を寝かせて再び様子を見る。
簡易的故、快適とはいえないが……雨の中野晒しにしているより遥かにマシだろう。

全く、あたしはこういう柄じゃあ無いというのに。
だが、〝私〟ならこうするだろう。間違い無く。
〝私〟も底抜けのお人好しだから。