■ 徒然

「……なんか思ったほど悪くねーんだよなぁ…」
島の生活は思った程悪くねぇ。
飯食えねぇのは小学校ん頃味わったし、親もいねぇし。
見た目でどうこう言う煩ぇ連中もそんなに居ねえ。
そもそも見た目については言われ慣れてんのもあるけど。
中学までは最悪だった。
家にゃ居所ねえし、見た目はバカにされるし。
母さんに何度も「普通に生みたかった」って泣かれんのも、親父に「女の恰好をするな」っつわれるのも、全部気にいらねぇし。
オレのことで毎晩喧嘩する親とか、聞こえねぇフリすんのでいっぱいいっぱいで。

「…」
高校には入れてもらったけど、大学は多分無理だ。
音大か専門……どっちにしたって金出しちゃくれねぇから。
一人暮らし始める為に今のうちにバイトして、何年か浪人するしかねぇんだろうなって思って。
音楽は好きだ、耳が塞げるから。
曲に耳を傾けてりゃ、その時はあんまし不快なモンも聞こえてこねぇ。
歌うのも嫌いじゃねぇ。幸い、ソッチの方向は結構才能あるみたいだった。
男が好き。女も好き。
自分が男か女かとか、どっちでもいい。
中学ん時に好きになったのが男子の先輩で、その後女子の後輩に告られて。
バイト中に知り合った音大生と付き合って、予備校勧められて知り合った女子と寝て。
どれも長続きはしなかったけど。
「やっぱ無理」って言われるのは慣れてきたけど、それでも傷つかねぇ訳じゃなくて。
自分の好きな事やって好きな恰好して、それを最初は良いって言ってたのに後から駄目って言われるのはやっぱしんどくて。
最近は恋愛っていうより……なんか、別の義務か付き合いの一つみたいになってきて。
でも多分、本当に好きになってくれる奴が欲しいんだろうなって。
嫌気がさしかけてんのにコナかけるような振る舞いしたりすんの、自分でもバカみてぇだって思うけど。
自分の好きが肯定されたい。誰かに好きになってもらいたい。
とか、考えてる自分がいるのが結構癪で。
オレの中身はいつもぐちゃぐちゃなんだよな。
ガッコの連中は今んとこ、そういうのがねぇから。
オレがサボりがちだったのもあるけど、アホが多い分、助かってる。
アホだけど。
マジでアホばっかだけど。
そこが嫌いじゃない。

「……だからって、満たされる訳でもねーんだけど」