Eno.34 SE-38

■ SE-38-07

 


▼ ――――男は語る。脳内で。
 

「セトガミサマからサンドイッチ貰ったぞ。ちょ~うまかった~」


「あんなうめえもん作れるのすげ~よな。オレ料理とか分かんねえからそんけ~するぜ」


「飯なんて食えりゃいいって思ってたけどよ、アレはちょっと考え方変わっちまうな。
 帰ったらもう拾った飯とか食えねえ気がする。いやしゃーねえ時は食うけど」



▼ 男は出身世界で拾い食い常習犯だった。

「嵐が近いらし~な?だから皆で対策したぞ~」


「嵐、ヤベえのは見たことね~から楽しみなんだよな。へへ……
 あっちじゃ天候がそこまで激しいことって多くね~しな」


「まあ甘く見ちゃいけね~のは分かってっけどよ……」



「後自己紹介とやらもしたぜ。やっぱ、みんな個性つえ~んだよな」


「ばっちしあだ名も考えたぜ~!ま、ぶっちゃけ気分でしか呼ばんからアレだが~」



▼ 敬称略、本日の自己紹介で男が命名しているあだ名一覧だ。
  尚気まぐれなので呼んだり呼ばなかったりするのだろう。

サート   →   サトサト
メグル   →   めぐるん
ベル    →   べるべる
サミュ   →   さみゅちー
セト    →   セトサマ、セトガミサマ
フォグ   →   フォグフォグ
ジセレカ  →   ジセジセ
シマ    →   しましー
ゼン    →   ネコチャン、ベンゼン
西島    →   にっし~
アツシ   →   あっつ~
アヤノ   →   あやのん

「かわい~ぜ。ヨシヨシ。まあ別にかわいいに拘ってるわけじゃね~けど」


「チキュー出身者が多いらしいな。みんな同じトコか時間軸?なのかは知らんけど。
 すげ~よな。コレもなんかの縁、っつーやつなのかねえ~」


「こんなおもろい奴らに会えたのに、会えなくなるんはやっぱもったいね~よな。
 まあまだ帰れるかすらわかんね~けどよ」



「しっかし、今日は割かし調子がよかったな~」


「一旦寝たら夢すら見ねえから起きてる方がずっとおもろいんだよな~。
 あわよくば一生起きていたいぜ、そりゃ無理か~」



「そういや猫班集まってたの、ちょっと嬉しかったんだよな~!
 ゆうてマジもん猫はベンゼン位だけどよ~」


「……ベンゼンもマジもん猫なのか分からんけど。ま、いいか~」



▼  そんなことを思考していた。 



 


▼ 某時刻。

▼ カンッ、カンッ。木を切り落とす音。

「~~~♪」



▼ 切る音のリズムに、鼻歌を乗せて。“流れる”歪な音楽。
  男は、歌はそこまで上手くはない。

「~~~♪♪……♪……」


「……?」



▼ ふと、これも“流れている”と過る。

「……」


「……“心音が流れているのが”……“分かるだろうか”」


「……“血が流れているのは”……“分かるだろうか”…………」



▼ そっと胸に手を当てる。確かに鼓動している。
  自分が“生きている”と、自覚することができる。

▼ 一度“死んだこと”を男は確かに覚えている。
  自覚している、そこから奇跡的に“生き返ったこと”も。

▼ その奇跡の間に、何かを見落としている気がした。