■ 嵐が来るぞ、有事の備え
けっこういい島だった。
薪や水は任せろという奴も多いんで時間の無駄が少なく、
面白い奴らがたくさんいるからモチベも高い。
寝床と食事付きで報酬(風呂)も悪くない。交渉しなくとも満足行く。
万事オッケーだった。
特に、釣りに赴く前に岩風呂に入るのがすっかり習慣になってしまった。おっさんか。
アツシさん、シマさん、ベル殿も頼れるいい男だったので、
アクシデントと少しの郷愁以外には特に文句なし。
3日間はそんな感じだったのを覚えている。
問題は4日目から、にわかに風が強くなってきたこと。
ああ何だこの凄まじいまでのデジャヴは!
俺は今まで皆が作ってくれた倉庫やコンテナの出来を信じてはいるが、石橋は叩いて渡るに越したことないと、
皆が大事な荷物をそれぞれの周りに抱えている。
雲は……こう考えてる間にも近づいているが、
まだ雨が降るには遠い。
いつもの旅ならば、雨が来るまでに進み切ってしまおうと、
早足になるのが常だけど。この島においては『備え』が肝要だ。
あの時ああしていればなんて、
冒険者が思うことは少なくない。
それが無駄な逡巡と分かっていても。
あの時波の高さを見誤らなければ。
あの時風が吹かなければ。
あの時、フートの鰭を、
仲間の誰かの手を掴めていたら。
こんな事にはならなかったし、
こんな経験をするには至らなかった。
フート、心配してるだろうな。
あの人がうちでいちばんの心配性だ。
悪いな、帰るのはもうちょっと先になる。
とびっきりの冒険の話で埋め合わせ…できないか。