Eno.68 觥 美鳥

■ 社務記録07

それほど。
山や谷のある人生を、送って来たつもりはない。

山の中の、田舎に生まれて。
山を越えた、学校を出て。
山の見えない、街で働いて。
お父さんが病気で引退するって言うから、田舎に帰って神社を継いで。

流されて、生きて来たと言われれば、そうなのかも知れないけど。

きっと、不器用で。
上手に、やれなくて。
他人より、下手なだけで。
何も出来ない、って。
それが、全てなんだろうなぁ。

「――…わたし、ここでも、迷惑かけてばかりだよ。」


「大人なのにね…。」



わたしは、もう、変われない。