Eno.597 鉄原すばる

■ 雨とジュースと、それから

バカやったり、軽口叩き合ってる間は、全部がウソみたいに感じる。

家族は、学校は、今頃大騒ぎしてるのかな。
それとも何も知らずに、私やみんながそろそろ帰ってくる、って思ってるのかな。

同じようなことばかりが、頭の中をグルグル、グルグル……。

雨、これからどんどん強くなるのかな。
降り出す前、ずっと砂浜や岩場を歩き回ったけど、財布は見つからなかった。

この嵐で、どこかに流れ着かないかな。
それとも、どんどん遠ざかっちゃうのかな。

ナナが拾ってきてくれた久々の梨ジュースは、泣きたくなるほどおいしくて。
懐かしいおいしさで現実に引き戻された心臓が、潰れるほど痛かった。



そんな状況だったから。

あの書き置きにどんな言葉が返ってくるのか、想像もつかなかった。
きつく絡め取られたままの気持ちで面と向かうのは、けっこう……緊張した。

でも、ゆっくり話して。
同じくらいグルグル悩んでるって、教えてもらえて。
身体じゅうの力が抜けた。

危ないことはしないで、って頼んだ手前、私も無事で居よう。

一緒に、がんばろーね。