Eno.253 半人半鯱のサート

■ 鯨の夢を、朝に見て

朝早くに起きて、少し島を見て回って、
それでえーっと。

えーーーーーっと。

アヤノ、早起き、フート、冒険者、雨粒

なんでか知らんが前後の記憶がまたあやふやだ。でも大きな騒ぎにならずには済んだか……?

二度寝して、夢を見たのは覚えてる。
起きたらゼンを枕にしてすげえ厚遇されてたし、
横向きに寝かされてた。


夢にフートが出てきた。
俺の事を見て、「私は半人半鯨のフートと申します。サートさん、どうかこれから…よろしくお願いしますね」と、ありふれた初対面の挨拶をして、握手を求めるように鰭を差し出してきた。
あんたの事はよく知ってるけどな。
背中側の腰にほくろがある事とか。
車椅子に座ってなければ俺より背が高い事とか。
と言おうと思ったんだけど、その後ろでニコニコ見ているリーダーの姿が幾分か幼なげに見えた。……齢12と17では、結構見た目の雰囲気が違うのだ。

この夢は、もう5年は前の話。

「その車椅子で、冒険者になるつもりか?」

俺は確か不躾にもそう聞いた。
見るからに高貴の出。深窓の、車椅子を誰かに引いてもらうようなお嬢様。

「だからこそです。悪路を自らの力で走行できるように、これから魔法で調節して行くんです。
陸を歩く脚がなくとも何処へでも私は行ける。”神より賜った試練”を持ってしても不可能などないと、世界に言いつけてやるのです」

それはどうやら見かけだけらしく。
彼女を『口説いた』リーダーは、ニコニコしていた。

……俺は、その鰭を恭しく俺の手に添えて。

「気に入ったよ、すごく真っ直ぐで。
俺は半人半鯱のデルピス・サートだ。よろしく、お嬢様」

うわ、気取ってんなー、5年前の俺。
そう思っていたら、目が覚めた。