Eno.132 死なずの獣、回向

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分け合う。
自身が持つものを、他に振り向けること。

詳細は省くが…少し喉を痛めたら、凄く酸っぱくて、少し甘い果汁を分けてもらったんだ。
…そうしたら、酸っぱいものを分け合ってしまった、みたいな罪悪感…なのかな、で分けてくれたニンゲンがしょげてしまった。
彼女は拠点の大きな蒸留機を作ったり、管理や整備をしているニンゲンで…少し落ち込みやすい性格のようだ。設備が壊れるたびに石のように固まっているのをよく見る。
そして彼女がしょげると、わたしも悲しくなった。

その後、その彼女がさんどいっち…なるパンに野菜と肉を挟んで切り分けた料理を作った。
…多分、手が込んでいたから皆すぐに食べるのは遠慮したのかもしれない。
読み合いをして手につけずにいたら彼女はまたしょげて、ひとりでもそもそ食べていた。
それで…いたたまれなくなったからわたしは一切れもらうことにしたけど、そこで思いついた。
それを美味しく食べる人が増えたら喜ぶのでは?と。

だから、さんどいっちを食べたそうにしていたニンゲンと分けっこした。
襤褸の服を纏う、まだ若い男のニンゲンだ。
彼は言っていた…誰かと、ものを食べるのはいい。
食べてる顔を見るのも、美味いものを共有してるのも、どっちもいい…と。
わたしは打算的な考えで彼と分け合ったけど、彼はそんなこと気にしなくて、それで…食べ進めるにつれてわたしの中でも考えが変わっていった。
美味しいものを食べて美味しい、となったり、誰かと一緒に話をしながらものを食べると楽しい、嬉しい、となったり…そういう感情が強くなっていった。

分け合う。
自身が持つものを、他に振り向けること。
でも、それは感情をより強く、多く、濃くさせるものらしい。
よい感情も、わるい感情も、等しく共有される。

不思議な経験だった。
だけどこれは遭難した先じゃないと、できなかった。
わたしを知らない者たちと共にいたからこそ、分け隔てなく、分かち合うことができたことだ。



嬉しいなぁ。あぁ、嬉しいとも。
犬ならちぎれそうなくらい尻尾を振ってたくらいには。
ふへへ。