Eno.253 半人半鯱のサート

■ 嵐の前に、ヒトは無力

半人外たちは、古来より海に親しんで生きてきた。
晴れた海に船を出し、荒れた海には帆を畳み。
それを侮った結果俺はここにいるわけだが。
だから、それなりに警戒してるつもりだったんだ。

……嵐の猛烈さは俺の想定を超えていた。
俺が船から投げ出された時の嵐より酷いんじゃないか?
少し外に出るだけでかなり疲れる。もう風呂にずっと浸かってて良いかな。
あと想定外だったのは、
意外とみんな外に出てあれこれ握りしめて帰ってきたこと。
いちばん心配そうな顔をしてたメグルが、
いちばん無茶をしてた。

冒険者は、基本的に分の悪い賭けをしない。
目の前に英雄となるチャンスを突きつけられた事が、
実を言うと幾度かあった。その上で堅実な方法をとったことだってある。

……基本的に、だが。
主にリーダーの意向で、バカみたいな無茶をして、
笑って乗り越えて、宿に帰ってただいまをいう日もある。
『分の悪い賭けに挑める勇気がある時点で、試練を乗り越える力がある』

そう言ったのは誰だ?
ちくしょう俺だった!

冒険者は、基本的に分の悪い賭けをしない。
冒険者は、ロマンを求める生き物だ。
俺の中で二つの冒険者としてのあり方が、
どちらも声高々に主張する。
普段は前者なんだがなあ。こりゃ参ったな。

厄除けのお守りを手に転がす。
メグルが握りしめていた石が、入っている。