Eno.34 SE-38

■ SE-38-10




▼ 某時刻。

▼ 嵐の森の中。
  あれだけ“出るな”と言われていた。

▼ 何より男自身が分かっていたはず。

「……?あれ、何で来たんだっけか」



▼ けれど、流れる様にここに居た。

「……ああそうだ、あんときの“水色”の答えが……出りゃ分かる気が――――」



▼ ――――ガンッ。 

▼ 飛来した何かに頭をぶつけた。
  グラついた頭に思わず手を当てる。

「ッてええ~~~~!!!やっぱ出るもんじゃね……」


「えな………………」



▼ 手の白い肌に乗る水色。

▼ 拭ったソレは、ヒトにあるべき色をしていない。
  そのこと自体は男にとって今に始まったことではないが。

▼ ここで強く自覚してしまう。“その色をしている事”。

▼ 男は“その色について”思い出した。

「……そう、そうだったな」



▼ ようやく、掴んだ。奇跡の間に落としたものを。

「あの日死んだ身体がこうして在るのも、
 動かねえはずの作りものの心臓が動いてんのも」


「お前のおかげだったじゃん……“ハヌル”。
 何で、思い出せなかったんだ?なあ……なあ!!!



▼ 思わず叫ぶ、口にする名はこの島にいる誰でもない者の、水色の名。

▼ 胸の前で手を組む。崩れる様に膝を着く。
  男にとってはこれが全身で表す“心から祈ることの動作”。
  何かで読んだ、見様見真似。

▼ そうすれば会えると、会えるはずだと知っている。

▼ 呼ぶ。願う。
  強く、呼ぶ。強く、願う。

▼ けれど何が来ることはない。何が起こることもない。 
  風がただ吹くだけ。雨がその流れに乗り横切るだけ。

▼ 男がただ嵐の中、祈りの所作を取るだけ奇妙な光景があるだけ。

「…………こうなるから、だよな。
 だからその記憶だけ“流した”んだろう。そういう力があるっつってたもんな。お前」


「……でも、じゃあ……何で……今…………」



▼ ぼそぼそと零した後、怪我を雨で洗い流す。

▼ 頭を打った衝撃は激しかったが、幸い大きな傷ではない。
  触れば腫れているのが分かるが、髪で隠れて分からない。

い゛ッ……まあ……血は止まったし誤魔化せるだろ。
 ぱっと見バレねえとこでよかった……後は大人しく、帰って寝るか」


「………………ちょ~っとだけ、疲れたな」



▼ でも寝りゃ何とかなる、そう呟いて。
  ひっそり拠点に帰って眠った。