Eno.110 永久の旅人

■ <私>の記録


―――― ガツンッ!ガツンッ!

キャリーバックから鈍い音が響き渡る

何度叩いても、
何度砕いても、
気付けば元の状態に戻るから

何度も、何度も
石斧を振り下ろした
…が、何回目かの破壊を終えた頃、あることに気付いた

(そういえばネームタグは…?)


元はと言えば このネームタグから身元が発覚することを恐れていたのに、そんなことはすっかり忘れていて…気付けばキャリーを破壊することしか頭になかった
破壊しても元に戻る…ならば 一度、冷静に考えてみよう

(みんな自己紹介をしていたわよね
名前も公表していたはず)

(その中の誰でもない名前がついたキャリーバックがあったら…
それは<私の名前>だと気付かない?)


それが誰の手にも渡っていないのなら、気付かない可能性もあるが、自分が行動不能の際に複数名で利用していたという話を耳にしている

(もしかして…ネームタグも、私のものだと分かるような物資も、中に入ってないの…?)


斧を手放すと、思い切ってキャリーケースを開けてみた

「!」


バラバラと、何かが吹き飛び嵐の中へと消えていく
慌ててキャリーの蓋を閉める

「なに、これ…」


キャリーバックから飛び出したモノ、それはポラロイドカメラで撮られた写真だった
ここではないどこかで撮られたたくさんの写真
中にはかなり古いものもあるようで、色あせているものもあった

ただ、どの写真にも共通した人物が映っている
服装や、若干の容姿の違いはあるものの、その人物に見覚えがある

「これは………」




「やっほ~
やっと思い出した?
…こうして対面するのは久しぶりだね」

「…シオマネキ
よくも姿を現わせたわね」



思い出してしまった
写真に写り込んでいる人物、シオマネキは

私だ