■ SE-38-11
▼ 男は思考する。
「……寝てちっとはマシになったな」
「思い返すのも、まあ悪くないよな?ハヌル……」
▼ “自身”について。
「オレは、被験体No.00038だった。生まれつき身体が弱かった。
主に内臓全般、順調に機能が死んでいくとか。なんかそんなん」
「だがオレは“運がいい”。
オレの内臓が一つ死んでも、誰かの……
“たまたまその日死んだ誰か”の内臓が一つ手に入る」
「……オレの意志じゃなかったけどな。
勝手に研究者が、内臓が死ぬたびに入れてきて、経過を見る」
「…………そう言う、実験の下の子供だった。
でも別に嫌だと思ったことはねえかな。
寧ろオレは他のヤツと比べて幸せだって思ってたし、今だって思ってるよ」
「……思わなきゃ、オレを生かしてくれてる奴らに……申し訳ねえだろ……」
「……でも、そんな風に考えてる事、どこかで後ろめたさを感じちまうのかね。
この身体を、痕を。オレの事を知らねえ誰かに見られるのだけはどうしても嫌だな……」
「だから、いつ見られるか分かんねえここの風呂に入るのは、正直怖い……」
▼ “水色の名を持つもの”について。
「オレはずっと夢を見た事がなかった。今も見ねえけど。
この身体の弱さのせいか、“酷く深く眠る”」
「そんなだったけど、調子がよかったある日、たまったま初めて夢を見た」
「その夢で逢ったのが“ハヌル”。
夢の存在……話は色々聞いたけど、ちゃんとは覚えてねえな。
要は誰かに認識されねえと死ぬ妖精みたいなもん……だったかな」
「水色の名を持つもの、ハヌル。持つ言葉は“流れ”。
……あいつは、逢った時点で相当存在として弱ってたらしい」
「懐かしいぜ。なんかオレ達って、ちょっと似てたりしたんだよな。
互いにしょっちゅう死にかけてるとことか。
その日から夢で色々遊んだり、話すようになった」
▼ あの日の思い出に思いを馳せる。
もう男にとってはずっと昔の出来事。
▼ そのはずだけれど、昨日の出来事のように思い出す。
「……ねみ~し、今日は思い返すのはここまでにすっか」
「懐かしいな~位のとこでよ、“流れを止めとこうぜ”」
▼ 男は、次回までこの件について考えることを“完全に止めた”。