Eno.132 死なずの獣、回向

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まだ海は荒れ、雨は強かに降り注いで拠点の屋根を打つ。
だが、喧しいほどに唸っていた暴風も、切り裂く悲鳴のように吹き抜けていた突風も、忽然と消えた。

凪だ。

誰が一番に成果を上げられるかを競争するみたいに皆こぞって外に飛び出していき、魚や木材を抱えては皆ほくほくした表情で帰ってきた。
待ち望んでいた材料が手に入ったようで、拉麺なる食べ物も作って食べていた。美味そう…
久しぶりにしっかり体を動かしたからか、それとも長きに渡る籠城で消耗していたのか、疲れたようですぐ皆眠ってしまったけど…



颱風は一度凪いでも、気を緩めてはいけない。
皆無茶をしないでくれ
止み間だからと船を出せば最後、それは後に続く逆巻きの大風によって沈められるという。
ひとりになりたくない
皆帰ってきてくれてよかった、と安心したのは、
強い颱風が空を陣取っているせいなんだろうか。
わたしひとりでは存在する意味が
それとも、ひとりじゃないことの喜びからなんだろうか。