Eno.110 永久の旅人

■ 真実の記録


それは ずっとずっと昔のお話



どうにかと水を確保しては飲んで。
いくらかの命を確保しては食べて。

――そうして、この島に流れ着いてから八度目の朝日が登ったのち。

「お~~~~~い」


聞き覚えのない大声の方向、水平線の上に映るは船影と人影。

「た、助けが来た…!
みんな、船だよ!!
私達助かったんだよ」


これは、私
そうだ、私は前にも無人島に流されたことがあったんだ

船員
「さ、準備ができたら船に乗ってくれ。
この船は"海"を介して世界を渡れる特別製だ。
どこでも、君が望む世界の海に送り届けてみせよう」


「ふーん、どこへでも?…言ったね??
 だったら…」

「リゾート旅行を超えるステキな世界に連れて行ってよ!」


そう、無人島から救助されたあと、私は色んな世界を巡って…
いつしか願うようになってしまったんだ

「この旅が永遠に続けばいいのになぁ」


これが全ての元凶だった

船員
「……宜しければご案内しますよ」

「え?本当に?
 じゃあお願いしちゃおうかな!」




それからどれくらい経っただろう
長い、長い旅だった
現代も異世界も、色んな世界を渡り歩いた

多分、夢中になり過ぎていたんだと思う
気付けば私は数年どころか数百年は旅を続けていた



「…それで?
どうして私は数百年も前から同じ姿で生き続けているの?」

「あれ、忘れちゃったの?
そっか、リスポーンした時にその記憶が飛んじゃったんだね」


リスポーン?なんのことだろう

「私ね、色んな世界を見て回るのが楽しくなっちゃってね」

「この旅が永遠に続かないかな~
って願ったら うっかり叶っちゃって…」

「でも私はただの人間でしょ?
永遠に旅なんて出来るわけないじゃん?
旅に一生を捧げるのも悪くないな~と思っていたんだけど…

神様って意地悪でさぁ」

「気付いたら歳をとらなくなったんだよね」


あぁ、思い出してしまった
私は自分で望んでしまったんだ

「いわゆる不老不死ってやつです」


ごめんなさい、と過去の私が頭を下げる

「少しずつ思い出してきたわ
…さっき言ってたリスポーンのことも教えてもらえるかしら?
私の記憶が欠落している原因はそれなんでしょ?」

「はは、お察しのいいことで
リスポーンはそのままの意味なんだけど…
私って不老不死じゃん?でも酷い外傷とかはすぐに直せる訳じゃなくて」


時間が巻き戻るとかそういうのではなくて、健常だった場所のどこかで"復活"するらしい
記憶の欠損はその代償に起きる現象だと説明された

つまり私は、ここに来る前に死んでいて、それまでの記憶がないのも…

「それって、今の記憶も消える可能性があるってこと?」

「…………」


<私>は何も答えてくれなかった

キャリーからはみ出した写真に写る<私>と親しそうに映り込む<誰か>
私はその人のことを全く思い出せない
それが記憶を失う恐怖をいっそう際立てた