Eno.484 リザ

■ 日記4

「嵐が来た。海が荒れてる。
波にさらわれかけて、わたしはすごく怖くなって……悲しくなった。

前は嵐なんてへっちゃらだった。荒れる海の中を泳ぐのなんて、陸の人が晴れた野原で駆け回ることくらい、かんたんだった。
でも今、荒れる海を見るとこわいと感じるのだ。
自分の体だけじゃなく、心まで陸の人と同じようになっている。

呪いの薬は本物だったんだ。
自分が、変わってしまってる。
わたしがわたしじゃなくなっていく感じがする。
むかしむかしの人魚姫の伝説なら、きょうだいたちがナイフを持って助けに来てくれるのに。
でも、ここには来ない。もう5日も経っているのに。

もうそんな希望を持ってちゃいけないんだ。
兄様も姉様も、お父様もお母様もみんな殺されちゃったんだ。
追放で済んだのは、わたしだけなんだ。
わたしが何もわからない子どもだから。

いやだ、いやだよ、さみしいよ……。」