■ さんじゅうきゅう
やったこと
・もくざいをあつめていれておいた
……ああ、よかった。みんな帰り方は、わからないし、どこから来たかわからないやつもいるんだな。
それを知ることができて、安心した。自分だけではないと言うのは、やっぱり、安心ができる。
と言うかみんないろんな形で流れ着いてんだなあ。泳いでくる体力があの子はすごいな………
時代もバラバラみたいだ。スマホ?だとか、ケイオー、と言う年の表し方は知らない。忘れているだけかもしれないが。たわまんってなんだ???
そういえば、ようやく晴れたな………青空を久々に拝んだ。いやあ、日光、最高!!!
だからせっせか働こうと思ったが…腹が空いて……あんまり動かなかったな………………無念。明日から頑張ります。
しかし、久々だからみんな張り切っていて今頃疲れ果ててんのかもな。釣りおじも様子が変だったしな。いつも食料を調達してもらって、ありがたい限りで。頑張っているから疲れてんだろうなあ…ゆっくり休んで欲しい。
明日はどうすっかなあ…木材か、水か。食料も確保したいし…やることが沢山だなあ。
沖合の方には船が出たらしいし。俺も行きてえ。捨てられた船はちょっとこう……心がくすぐられるな…嵐の後っていうのが何よりいい。いいよな……
米とか酒とかあるらしい。浮き輪もあるとか。なんか色々あるな。
俺は奴隷だから…嗜好品は飲んだことない…いやあるか…?ぼやっとしてんな。急にみんな年の話をし始めたからびっくりした。なんで?歳で飲めるのが決まっている街もあるんだろうか。俺のところもそんなだったのかな…?そんな気はなぜかしないが………そもそも俺はいくつなんだ………??でもわかいぞ、多分。若者だ。絶対そう。髭が生えてるから老けてるように見えるだけだから。多分。
あとは、そうだな、瓶詰めにして他の島に流すって話だ。ダイレクトメッセージってやつだっけか。
ダイレクトメッセージ、いいなあ。小瓶に手紙を入れて流すのってロマンな感じがするだろ う。ろまん って難しいもの だがま あ良い。俺は結構好きかもし れないな、浪漫。
いつかどこかの 誰かが俺たちのしまでの記 録を 読んでくれるんだぜ?
役 立つか もしれないし な、別の 流れてきたや つらの。
ああ あ ああ
呼吸だ、呼吸が大事。
お日様で温められた、優しい空気を吸っている。
─異常も、問題も、無し。
それ以上が、いまは思い出せない。
ただ感覚として、血管に血の通る記憶が、嫌だったことを、また、思い出した。薬に嫌な響きがあるなあ…薬が苦手なのは子供みたいだなあ……
だから応急セットが苦手で、できるだけ避けていた、みたいだな。無意識みたいだが。…怪我、気をつけよ……
忙しさに身を任せよう。楽しい会話をしているのが、一番だ。
みんなで無事に脱出できるといいなあ。
帰りたい場所がある人は、そこに辿り着ければいいな。
酒を飲んで宴するのも楽しみだなあ。
俺はいまだに全然思い出せんが、帰る場所がある奴らは帰らないとむしろそれはまずいだろうし…
…ていうか本当に回収されたら元に戻してくれんのかな……なんか場所も時代もバラバラだぞ。
戻せるんならすげえ技術持ってんだろうな……
瞼を閉じると、嵐の音がする。
波の音がする。
波は全てを飲み込んでいく。
うなりに人は打ち勝つことなどできず。
ただただ、攫われていくだけなのだ。
起きている今、近くしている今。これは現実か、そう、そう。
頬をつねっても痛いのが現実か?現実だ。
足元に冷たい水が寄せている。
海水を飲んで、呼吸ができないのは、嵐の中で水を叩きつけられたのに似ていた。
簀巻きにされていて身動きが取れない。ただただ、腕を動かすこともできない。
簀巻きにされた布は海水を吸い込んで、徐々に徐々に重くなって沈み込んでいく。
ただでさえ、目は見えない。前は暗い。
その暗がりが、広がっていく。陽の光が届かない場所へと落ちていく。
夜より深い、深い、深い、紺色が、藍色が、黒が、影が満ちていく。
手と足に枷はされたまま、ただもう終わりだと言う冷たさだけが、体と頭を蝕んで、おかしくして、冷静にして、溶けて、解かした。
その冷たさに、なぜか、やわらかな何かを持っていたことを、必死に忘れている。
思いを巡らせているだけ。