Eno.597 鉄原すばる

■ Pleiades.

冬に産まれた私に、両親は星の名前をつけた。
小学校の頃、自分の名前の由来を親に訊いてくる、という宿題が出たことを覚えている。

その日の夕食後、私がテーブルの上にノートを広げて由来の聞き取りを始めると、両親は顔を見合わせて笑った。

母は私の鉛筆を手に取り、ノートにまず「すばる」と書いた。

父が私の顔をやわらかく見据える。
これはずっとずっと昔から、たくさんの人たちに愛されてきた星の名前だよ。

あなたの名前には、三つの意味を込めたのよ。
母はそう言うと、「すばる」の下に三つの矢印を引き、ひとつめの矢印に「昴」と書いた。
あなたがこの星のように、きれいに光り輝くように。

ふたつめの矢印には「統ばる」と書いた。
あなたの周りに、たくさんの友達が集うように。

そしてみっつめの矢印には「素晴」と書いた。

あなたが産まれてきたことは、私たちにとって何よりすばらしい出来事だったのよ。



嵐が去って晴れた空に、東京ではとても見られない無数の星がきらめいている。

びっくりして、ひっくり返るかと思った。
美味しかった、はず……なんだけどな。
グラタンの熱も味も、脳にはちっとも届かなかった。

お父さん、お母さん。
世界一すてきな名前をありがとう。