Eno.617 甘利 莉子

■ 自問自答、っす

この島に流されてからもうすぐ7日が経つ。
7日目に通りかかるであろう船に合図をして救助してもらうか、船を待たずしてボートでも作って脱出するか。たぶんみんなの意見はそれでまとまると思う。

みんなは帰るべき場所とか、帰りたい場所があると思うんだけど。私にはそういうのは特にない。
いつかでっかくなって凱旋してやるという野望はあったけど、それももうどうでもよくなってしまった。

気付いてしまったから。
みんなで過ごしたこの日々が、この生活が。
あんなにも楽しかったのは、みんなを好きになったからだって。

ちっちゃいキーカさんやふわふわのこいぬくんを眺めて癒されたり。リラドナーさんやモルガナイトさん、ベリダさん、ベルシカさん、フラムさんが話し合ったりじゃれあったりしてるのを見たりとか。コニッシュさんとお料理したりとか。アラタさんやしときさんとおしゃべりしたり、サトルさんに話しかけてもらったりとか。
みんなであちこち探検して、色んなものを作って、お話しして、協力して、嵐の中で籠城したりして。本当に楽しかった。
ただ観察のために近付いて仲良くしていたのに、気が付けば心の底から気に入って、お友達でいたいって思うようになっていた。

同胞のみんなのことは別に嫌いでもなんでもなかったけど、あまり好きにもなれなかった。
みんなには当たり前のように備わっている奉仕精神というか、種の繁栄のための自己犠牲を厭わない思考回路みたいなのがどうにも自分には備わってないみたいで、みんなのことが理解できなくてなんとなく薄気味悪かったから。

今なら同胞達の気持ちがわかるかな、って思ったけど、やっぱりわかりそうにはない。
みんなで一致団結してワイワイやるのは楽しいけれど、何もないままひとりで放り出されて、役に立つかもわからない仕事を延々と続けるのはきっと楽しくないんだ。
それが本当に誰かの役に立っていて、「ありがとう」って感謝されるならいいんだろうけど。働いても働いても報われるとは限らなくて、いずれは使い捨てられるのが目に見えてるのはやっぱり——嫌だ。

せめて自分へのご褒美が欲しくて、成り上がって下剋上して次の女王になってやるって思ってたけど。もうそんなのいらなくなっちゃった。
私はきっと最初からできそこないではみ出し者の欠陥個体だったんだ。だったらもうそれでいい。
落伍者なら落伍者らしい生き方をしてやる。私はもう群れには戻らない。

私は、私として生きてやる。