■ SE-38-13
▼ 男は思考する。
▼ 頭で、いない“水色”に。一方的に語り掛ける様に。
「続きといこうか、ハヌル」
▼ “自身が死んだ日”について。
「ある日、オレの身体はあっけなく“死んだ”。
あんだけ無理な実験で身体めちゃくちゃだったんだ。そりゃそうもなる」
「そもそも今まで生きてた方が運がよかったんだよ」
「……そんなオレを蘇生しようと“作りものの心臓”とやらを入れたらしい。
その心臓、改良を重ねまくったんだが今までに一度も動いた試しがなかったとか」
「死んでるオレの身体にんなもん使う、その神経は……ウケる。ホント」
「物理的につなげることはまあ成功したが、動くわけねえよ。
そもそも中身もほぼっほぼオレのもんじゃねえし」
「……それで、良かったんだ。けどあいつは、ハヌルは、」
「……上手く、オレの血が“流れる”様に、心音が、“流れる”様にした。
存在の全てを使って。存在そのものを、オレに使った」
「引き継ぐように、流れる血はあいつの水色。黒だった瞳も水色になった」
「やめろっつったのに。馬鹿だよほんと。
何でこんなただの人間にそんなことしたんだか……」
「……なんてな、今なら分かる。オレも立場が逆でさ。
そうできたなら、そうしただろうな」
▼ “その後”について。
「施術が終わって、オレはハヌルの事を何も覚えてなかった。
研究者の間では変色した血液と瞳に大騒ぎだったけどよ」
「結局研究者側では原因不明のまま。“奇跡”の一言で片付いちまった。
しょうもねえんだよあの研究施設。何を研究してんだって感じ」
「そしてその施術以降、オレの身体は異常がなかった。
気味わり~レベルで、全ての内臓機能が正常」
「……加えて、どういうわけか身体が歳を取らなくなった。
機能してるなら消耗するはずなのによ。更に身体能力が上がる謎のおまけつき」
「思えばそれもこれも、ハヌルの持つ“流れ”の言葉の影響なんだろうな。
オレが上手く生きれるように、調節されてんだろ~な」
「研究者の間じゃオレは臓器移植の被験体から“不老”の被験体扱い。
“不死”かは今んとこ分かんねえな。
まあ多少の怪我くらいじゃどうにもならんのはそうだが」
「老いて死は無いかもしれんがヤベえ怪我とかじゃ普通に死ぬと思うな。
だからまあ、その辺は気を付けちゃいる……つもり」
「流石に年齢が大人の扱いになったころにゃ、世にも出せねえ存在だし。
経過見守りも兼ねて研究所が持ってる清掃局に無事就職ってわけだ」
「そっからはず~っと、清掃局一筋人生だ。
まあ清掃局については……仲間もいるし楽しい職場だよ。やりがいもあるのはホント」
「現、元被験体の奴らばっかで……
大半が身体も精神も弱いから、局員は簡単に消えちまうけどな」
▼ 一つ、ため息をついた。
「“流れ”としてはこうだろ?超端折ったけどよ……今はこれ位にしとくか」
「肝心なオレとお前の事が少ない?それは今回はい~の」
▼ 男は、次回までこの件について考えることを“完全に止めた”。