Eno.32 ロジータ

■ 時空の穴

どうやら、流れ着いた船は全く時代が別の船らしい。
実物を見ていないからわからねぇが……あの嵐の中出て行って死にかけている貴族らしい男が敷いた道が虚空に繋がっていると噂だ。

でけえ船一隻を通すほどの時空魔法か……時空魔法の使い手としては、気になるところだが、調査する余裕はねぇ。
罠の管理に木材の調達に、身体の管理にと、全くと言って良いほど余裕がねぇ。
ギリギリ、切り詰めた状態で動いているせいか、動くたびに生命力が削れているような気がするし、休んでも休んだ気がしねぇ……。
んでも、俺よりずっと状態が悪ィ奴がわんさか居るし、食料が限られている中でバカスカ考えなしに食うわけにもいかねぇ。

やれやれ……やっぱり、生身の身体で無茶するのは骨が折れる。
無茶したら無茶した分が綺麗に跳ね返ってきやがる……。
畜生……こうもままならねぇとは思わなかったぜ……。
嵐の間は忘れてたけどよ……。