■ オ
嵐前日。

「こんな感じかな……」
拠点の壁はレンガとモルタルで補強されていた。
近くにはレンガを焼くための窯も作られている。
一般知識だけでは中々難しいと思われるこれらの工程をどうにかして彼は終えていた。

「……昔じいちゃんにレンガ造りのやり方を教わった経験と、
この前DIY教室で窯の作り方を習った経験と、
少し前に工事現場でバイトしててモルタルや壁材の作り方を学んだ経験が生かされたな」
唐突に無から生えたような過去エピソードを早口で喋り始める。

「うん……これだけやれば多分大丈夫だ。
疲れたし寝よ……」
慢心をキメてひと眠りする。
* * *
嵐当日。

「ウォオオオオッ!……オオッ!……ウオッ!!」
想像以上の暴風雨が拠点に襲い掛かる。
補強したとはいえ所詮は素人設計。
壁や天井は音を立てて揺れ、隙間から雨や風がドカドカ入り込んでくる。
横を見ると荷物は雨風でぐちゃぐちゃになっており、
昨日頑張って作ったオールイン号も半壊している。

「オールイン号……!! し、死んでる……!」
色々と悲惨な状況になっているが、
それでも自分の身体と一部の重要な荷物だけは風雨に晒されずに済んでいた。

「……想像より酷い事になってるけど、
野ざらしにならなかっただけマシかな……」
そう感じた直後、ベキベキという音が響き天井が勢いよく吹き飛んでいく。

「!?」
連動して倒れる壁。

「ウオオッ……!」
* * *
嵐が過ぎ去った。
外は晴れ、小鳥の鳴き声と水滴が水たまりに跳ねる音だけが静かに響いていた。

「……」
ずぶ濡れで放心状態になっているいぬ。
拠点は嵐によって何度か壊滅した。
具体的に言うと二回ほど拠点(壊)になった。
だが幸いにも重要な荷物が流される事は無く、自身に怪我も無かった。

「ウオ……ウオ……」
徐々に心を取り戻し、ゆっくりと立ち上がる。
やるべき事は色々あるが、まずは身体を温める為に焚き火に適した木材を探し始めた。