■ 日本語の日記 九頁目
嵐で拠点に押し込められていると、
自然、徒然なる時間を持て余してしまう。
そういう時に伸びてくる良くない想像を枯らすには、
何か盛り上がる話頭を持ってくるに限るでござる。
聞けば、修学旅行の夜にする話題と言うと、
『恋バナ』と相場が決まっているそうで。
しかし、静かに育むべき恋が砕けて、
この孤島での生活がギクシャクしては元も子もないでざる。
ならば、ここはやはり『怖い話』でござろう。
前に誰かが話していたときも、
何やかんやで皆楽しんでいたのではなかろうか。
――それは、拙者が日本に留学する朝の話。
身支度を終えた拙者は、前日何度も確認した旅行鞄を抱えて
自宅を後にしたでござる。
戸締りも完璧、きちんと施錠した戸は、
拙者以外の何者も開く事はできないでござろう。
しかし、何だか胸騒ぎがする。
空港までの送迎車の中で、荷物を確認してみても、
目立った忘れ物はない。
後ろを追跡するアヤシイ車ももちろんない。
それでも、胸につかえた何かは容易には消えなかったのでござる。
とは言え、時間は刻々と過ぎて行くもの。
予定通りの航空機に乗り込み、
その快適な空間に安住したとき……拙者は思わず『あっ』と叫んで膝を打った。
拙者はその時初めて、
故郷に見捨ててきた自宅のエアコンを切り忘れた事に
気が付いたのでござる。
故に、拙者は故郷の事を思い出すといつも、
主なき部屋を快適にし続けるエアコンと、
猛烈に垂れ流す電気代とに想いを馳せるのでござった……。
いや、これ、他の人が聞いてて面白いか??
滑る未来しか見えないので大人しく封印するが良かろう。
最悪、SDGsの化身こと伊藤殿に天誅されるかも分からんし。