■ LOG#04

「…………」
『Project:HelloWorld』の発足ならびに『こんにちはネット』の完成と成功。
それらを乗り越えてから、たびたび技術者倫理について考えることが増えた気がします。
というより、向き合わざるを得ないというのが正しいのですが。
古来から、移動手段の確立は侵略手段の確立を意味します。
遠方へ行けるようになれば、行く先の弱小国は蹂躙される。
海を超えるようになれば、新大陸に住まう先住民は奴隷として捕らえられる。
これはおそらく、異星に生命体が見つかっても、
もしくは……他世界に文明を確認しても、同じことが起こるのでしょう。
そうした先人の歴史を鑑みるたび、この論文を発表する足が止まってしまう。
別段、人間を信じていないという訳ではないのですが。

「……決して、ライト兄弟を侵略者と唾棄したいわけではないんですけれど」

「特異点になる覚悟ができていないあたり、わたしは天才には向いてないのかもしれませんね」
そうして、次元跳躍型世界間転移装置『1M-601N9』の仕様書設計書は
今日もまた金庫に籠もりきりなのでした。