Eno.34 SE-38

■ SE-38-16+?

 


▼ ――――男は語る。脳内で。

「島出る目途は立ってきたな~。
 オレほぼ木材しか貢献してねえけど。船作っちまうなんてすげえよ」



「料理の話も盛り上がってたな~。
 オレも帰ったら料理してみっかな。やらかす自信しかねえけど……


「あ、でもレシピ通りにパン作ったらちゃんとできたんだよな~。
 アレはめっちゃ感動した。パンうめ~~~」



「砂浜ちょっと散歩しようと思って出てったらよ。
 まさかのメグルが来てびびったぜ~。勿論超嬉しかったけどよ~」


「メグルって、楽しそうに何も考えてねえとか言うんだよな~。
 実際そんなことも無いくせによ」


「なんつ~か、ちょ~っとだけ。オレと似てる気がすっけど。
 流石にそう思うのはあいつに失礼かもな?」


「メグル……メグルって名前で、良い巡り合い……
 名前に適ってる感じ、なんか……いいよな」


「何だかんだここで一番話した奴だな~。
 ……水色に妙に、縁があるこったな」



▼  そんなことを思考していた。





▼ 某時刻。

▼ 砂浜の波打ち際。気まぐれ散歩にやって来た男は靴を濡らして歩く。
  歩く足跡に波が乗り、やがては引いて流れ消え去る。

▼ その、一瞬一瞬。砂浜に微かに言葉が掘られゆく。
  そしてやはりどれもが、すぐに消えてしまう。

▼ 男がそれに気づくことは無いが……こう綴られゆく。


 ミツバには、この言葉は届かない。
 もっと気付いてもらえる手段があったらよかったのだが。

 だったら、コレを見てくれる“貴方へ”。
 すぐ消えてしまうが送ってみようと思う。

 この世界には“記録”と言うものがあるのだろう?
 きっとどうにかして残ってくれると信じている。

 ミツバの事を、自分の存在全てをかけて助けたのは……
 ミツバの身体を弱める原因が自分だったから。
 罪滅ぼしのつもりだった。

 ミツバは夢を見ない。それ位身体が深く眠っている。
 それをあえて、夢が見られるくらいの睡眠状態にする。
 力の扱いの上手い夢の存在なら、身体を休ませつつ夢も見させられたんだろうが。
 自分は扱いが上手くもなければ、力も残ってなかった。

 自分が夢を見せ続けたのが原因で、死んだみたいなものだ。
 まあ……ミツバはそんなわけないって笑うんだろうけど。

 罪滅ぼしって書いたけど、そう。
 人で言う……情ってものが沸いていた。
 夢を見させなければいいのに。気づけば会いたいのは自分だった。

 好きだったんだよ、単純に。ミツバの事。

 これだけ書くと、ヒトで言う愛の告白みたいだな。
 あまり分からないが、文字通り好きなのは確か。
 だから、どうしても……生きてて、笑って欲しかった。

 これももう届くことない、ここで吐けただけで満足だ。

 ……存在しない存在にしては、残しすぎた気がする。
 これで自分の物語はもう、彼に引き継いで終わりだから許してほしい。

 さようなら、読んでくれてありがとう。
 もしもミツバにまた会うことがあれば。彼をよろしく。

 貴方たちの流れゆく物語が、よいものでありますよう。

              水色の名を持つものだったモノ “ハヌル”


▼ 僅かな認識から生まれた力で、流れ生み出された言葉は。
  もう、形成されることは無い。