■ 16.船、それぞれの願い
この[時空]は様々な[時空]からモノ、人、文化が流れ着く。浜に漂着した船は、船を造るのに必要なモノをすべて積んでいたが、
ここに似た[時空]の船とその設計図だった。
これでは帰れない
と、悟る。
だけど、
これに乗ってかつていた[時空]に[帰らない]ことを選択しようとしている人がいる。せめて別れが悲しいものにならないようにと船に積まれていた米と、島に自生する木の実や野草でカレーを振る舞おうなんて考えるべきではなかったと、
[帰らない]を選択しようとしている二人の主張を耳にして、開いてしまった切り傷を見ながら悩んだけど、俺にできることは一つしかない。
だから、今日も森で船に使う材とサプライズの準備を進め悩みを忘れることを選んでただひたすらに働いて、働いた。そして[島]に流れている空気感が変わったことに気が付いた。
[時空]が1か所にまとまろうとしている。
俺が暮らしている[時空]の力も少し。本当に近づいているならこの程度の怪我は治せる。
そう、突如思い出した。組織の必須課程:龍脈の補足とその転換利用を。
使えるか試した時に居合わせたみんなは驚いた、そりゃそうだよな・・・・。妖怪も魔法もない、[敵]がやってこなかった[地球]という世界の出身者が見れば奇跡そのものだしほかの[時空]に存在するかもわからない。おとなしく、治しきれなかった分は従来の治療法で対処することにした。
6日目の昼下がり、一杯目の[カレー]が出来ていた。
予想はしていたが、人々が生きていた時代のことを知りたいと願うジセレカくんが見よう見まねで作ったらしい。初めてにしては上出来なその匂いを嗅いでいたらますますみんなに振る舞いたい気持ちが高まってしまったし、すでに全員が乗るには十分すぎる船、
[ウルトラスーパービューティフルブレイブイヴァーナ号]が完成している。
何度口にしても長い名前なので便宜上US.BBB号と表記することにする。
ふと、[島]につくと必ず手にしている便箋のことを思い出した。
ー7日ほどに1度巡視艇が来るかもしれない
日が落ちるのに48時間かかっているからまだ72時間もあるじゃないか気を引き締めないとダメだ。
一方、本部
「[島]の兆候、確認しました!」
広域調査課の観測用メインモニターにそれは現れた、
「場所は、あぁ同じポイントだ・・・。」
モニターには[島]から送られてくる[淀み]に似た波は様々な[時空]の力が入り乱れ上下し続けている。その中で異彩を放つのは・・以前白河隊員が7日を過ごした[傲慢の後始末]の一つと類似する[時空]に由来するモノが2つ、[管理という名前の停滞]由来が1つ、そして[創世]由来のモノ。
異彩を放つ[時空]由来にいた存在にとって[島]での生活は楽園あるいは希望。それを夢で終わらせるわけにはいかない。彼らが夢の続きを求めるならそれに答えるのが我々の務め。
「むすびを使用する。」
-むすび
それは広域調査課所有の規格外の大きさと[時空]捕捉機能を備える調査艇、移動要塞とも呼ばれている。
他の救いが来ているならそれはそれでいい。最後に選択するのは本人だから。