Eno.159 セト=ロベリア

■ 白金、混色の魔王の語ることには

「たまには白金の娘の話をしようか。」

「今世での名前はクリスフィア。
 その前がジャネット、その前はアリス。
 さらに前は──リリス、だった。」

「リリスはアダム……青の番。
 創造主が作りたもうた、かの世界の初めての番」

「創造主と彼らは様々を生み出したというね。
 リリスは特別、星と花が大好きだった。」

「アダムは彼女に恋焦がれた。……が、おそらく君も知っての通りだ。
 彼は彼女の気を引こうとしたんだが、裏目に出る行動ばかりでね……」

「居た堪れなくなったリリスは逃げた。……身を投げたのさ。」

「創造主はこれを不都合に思い、世界に輪廻転生のシステムを作った。
 白金がまた巡って、世界に戻ってくるように。
 
 瞳の色は魂の色。白金の瞳を持つ娘は、時代を追うごとに現れた。」



「アリスは──二番目の魔王、魔術王の妹だった。
 豊かな金髪の聡明な娘で、兄の善政の大いなる助けになったというよ。」

「兄妹はとても仲が良かった。魔術王の記憶を引き継ぐ僕が言うんだから、それはそれはもう仲睦まじかった。」

「アダムはそれに嫉妬したんだろうね。
 魔術王が魔術を発展させすぎた──人が強くなりすぎたのもよくなかった。
 アダムは魔術王を操り、アリスを殺させ、魔術王も殺してしまった。」

「魔術王はその膨大な魔力、そこに悪魔の手が加えられ、
 人を襲い喰らう魔獣の根源──瘴気を生み出した。
 この瘴気が曲者でね。これを全部回収するのに1000年単位の時間がかかった。」



「ジャネットについては、僕はよく知らなくてね。
 彼女の居た時代には魔王がいなかったから……」

「魔獣により衰退を余儀なくされ、滅びかけた人々の希望であったと聞いているよ。」

「最前線で武器を振るい、魔獣から人々を護る騎士という役職を作り出した。」

「彼女は戦乱の中に命を落としたとも、黄銅の愚王により殺されたとも言うが……
 黄金の瞳を持っていた騎士王が、黄銅の瞳の愚王になった……魂の色が変わる、この事態には青が絡んでいるらしかった。詳しくはよくわからない。」



「クリスフィアは可憐な娘だ。
 騎士の家に生まれ、双子の弟と共に育った。
 とてもお転婆な子でね……親御さんも手を焼いただろうな。」

「彼女に関しては少々複雑でね。
 というのも、彼女の父親に既に青が絡んでいた。」

「『英雄の器』の少年の話はしたよね?
 少年の兄が、クリスフィアの父……赤銅だったんだ。」

「あえて赤銅と呼ばせてもらうよ。彼は彼の名前がとても嫌いなようだから。」

「赤銅はそれはそれは青に恨まれたようだよ。
 手塩にかけた『英雄の器』を殺し、あまつさえ白金に父として大層慕われたものだから。」

「クリスフィアが7つの時、赤銅が失踪した。
 正しくは、青の手によって異世界に放逐された。」

「その翌日、残された妻子を強大な魔獣が襲った。
 神に敵対する存在まで利用するなんて、いかれてるね。」

「結果── 母は一命を取り留めるも半身を失い、双子の弟は死亡。
 クリスフィアは逃げ延びたが、記憶を失い、瘴気に侵されてしまった。」

「一家離散。この後も、この家族は本当に酷い運命を辿る。」


「青を絶対に許さないと決意する程にはね」


「……まあ、その辺は置いといて。少し面白い話をしよう。」



「白金の魂に宿る権能は『魅了』だ。」

「彼女と共にあればあるほど、近くにいればいるほど、彼女を無条件に愛する。
 これが凄くてね、神々にまで作用してしまうんだ。」

「ありとあらゆるが彼女を愛する。
 ありとあらゆるが彼女を祝福する。
 無数の神の加護を受け、世界そのものにまで愛される。」

「だから、瘴気に侵されても魔獣にならない。
 どんなに無謀なことをしても成功する。
 絶望に打ちひしがれても、必ず打開する。
 どんな苦難に見舞われても、最後は勝利を掴みとる。」

「創造主までも魅了する輝きだ──」


「メアリー・スーと言えばいいかな。彼女は絶対に敗北しない。」

「……さて、彼の白金を愛する気持ちはどうだろうね?」