■ 白金、混色の魔王の語ることには
「たまには白金の娘の話をしようか。」
「今世での名前はクリスフィア。
その前がジャネット、その前はアリス。
さらに前は──リリス、だった。」
「リリスはアダム……青の番。
創造主が作りたもうた、かの世界の初めての番」
「創造主と彼らは様々を生み出したというね。
リリスは特別、星と花が大好きだった。」
「アダムは彼女に恋焦がれた。……が、おそらく君も知っての通りだ。
彼は彼女の気を引こうとしたんだが、裏目に出る行動ばかりでね……」
「居た堪れなくなったリリスは逃げた。……身を投げたのさ。」
「創造主はこれを不都合に思い、世界に輪廻転生のシステムを作った。
白金がまた巡って、世界に戻ってくるように。
瞳の色は魂の色。白金の瞳を持つ娘は、時代を追うごとに現れた。」
「アリスは──二番目の魔王、魔術王の妹だった。
豊かな金髪の聡明な娘で、兄の善政の大いなる助けになったというよ。」
「兄妹はとても仲が良かった。魔術王の記憶を引き継ぐ僕が言うんだから、それはそれはもう仲睦まじかった。」
「アダムはそれに嫉妬したんだろうね。
魔術王が魔術を発展させすぎた──人が強くなりすぎたのもよくなかった。
アダムは魔術王を操り、アリスを殺させ、魔術王も殺してしまった。」
「魔術王はその膨大な魔力、そこに悪魔の手が加えられ、
人を襲い喰らう魔獣の根源──瘴気を生み出した。
この瘴気が曲者でね。これを全部回収するのに1000年単位の時間がかかった。」
「ジャネットについては、僕はよく知らなくてね。
彼女の居た時代には魔王がいなかったから……」
「魔獣により衰退を余儀なくされ、滅びかけた人々の希望であったと聞いているよ。」
「最前線で武器を振るい、魔獣から人々を護る騎士という役職を作り出した。」
「彼女は戦乱の中に命を落としたとも、黄銅の愚王により殺されたとも言うが……
黄金の瞳を持っていた騎士王が、黄銅の瞳の愚王になった……魂の色が変わる、この事態には青が絡んでいるらしかった。詳しくはよくわからない。」
「クリスフィアは可憐な娘だ。
騎士の家に生まれ、双子の弟と共に育った。
とてもお転婆な子でね……親御さんも手を焼いただろうな。」
「彼女に関しては少々複雑でね。
というのも、彼女の父親に既に青が絡んでいた。」
「『英雄の器』の少年の話はしたよね?
少年の兄が、クリスフィアの父……赤銅だったんだ。」
「あえて赤銅と呼ばせてもらうよ。彼は彼の名前がとても嫌いなようだから。」
「赤銅はそれはそれは青に恨まれたようだよ。
手塩にかけた『英雄の器』を殺し、あまつさえ白金に父として大層慕われたものだから。」
「クリスフィアが7つの時、赤銅が失踪した。
正しくは、青の手によって異世界に放逐された。」
「その翌日、残された妻子を強大な魔獣が襲った。
神に敵対する存在まで利用するなんて、いかれてるね。」
「結果── 母は一命を取り留めるも半身を失い、双子の弟は死亡。
クリスフィアは逃げ延びたが、記憶を失い、瘴気に侵されてしまった。」
「一家離散。この後も、この家族は本当に酷い運命を辿る。」
「青を絶対に許さないと決意する程にはね」
「……まあ、その辺は置いといて。少し面白い話をしよう。」
「白金の魂に宿る権能は『魅了』だ。」
「彼女と共にあればあるほど、近くにいればいるほど、彼女を無条件に愛する。
これが凄くてね、神々にまで作用してしまうんだ。」
「ありとあらゆるが彼女を愛する。
ありとあらゆるが彼女を祝福する。
無数の神の加護を受け、世界そのものにまで愛される。」
「だから、瘴気に侵されても魔獣にならない。
どんなに無謀なことをしても成功する。
絶望に打ちひしがれても、必ず打開する。
どんな苦難に見舞われても、最後は勝利を掴みとる。」
「創造主までも魅了する輝きだ──」
「メアリー・スーと言えばいいかな。彼女は絶対に敗北しない。」
「……さて、彼の白金を愛する気持ちはどうだろうね?」