Eno.32 ロジータ

■ 不味い……

一度削れると中々戻らねぇんだな……むしろ、動く前よりも悪化している気がする。
動けねぇとは自分でも言ったが、これは本当に……動けねぇ……。
このまま無理に動いて、アクシデントに出くわしたら最悪、行動不能になっちまいそうだな。

罠の管理だけやって、湯治に努めるのが最善だろうか……。
まだまだ、沿岸は暗く頼りない。
これを機に、灯台をもう一台建てるのも良いかもしれねぇ。
明日までに船が仕上がらなかったらそれこそ詰み、だからな……やれることはやっとかねぇと。

……援助に来たはずの自分が、このザマとは情けねぇな。
城に帰ったら、揶揄われちまうか? いや……真っ先に怒られるだろうな。
姫にゃ、偉そうにあんなことを言ったが、俺も怒られるのは一緒だ。
偉そうに説教垂れる資格はねぇ。
だが……まァ……来たこと自体には後悔は無い。
むしろ、最高に生の実感を得ている感じがして、楽しくもある。

公爵になってからは、物理的な荒事とはすっかり遠ざかってたからな。
昔のとは系統が違うとはいえ、こういうギリギリの身が削れるような奴も嫌いじゃねぇ。
まるで、昔に戻ったような気分だ。