Eno.139 薄井すもも

■ うみのむこうをみすえて

花の香りで目を覚ました子供は、砂浜へ駆けて。
嵐の過ぎた静かな海を眺め、考える。
最初は目先の冒険のことしか頭に無かった子供。
けれど今は、冒険の目指す先をしっかりと見据える。

『皆で無事に帰る』、そのために。

おもむろに衣服の両袖をもぎ取った。
動きやすい装いになって、目的に向けての気合を入れたのだ。
あと単純にこの島の気候のなか長袖でいるのが暑かったのだ。

そして子供は気付く。
買ってもらったばかりの服をびりびりにした。しかし、とがめる家族はここにいない。
己の置かれた自由という境遇を、真に理解した子供は。
解き放たれた姿で、しばらくの間、海を眺めていた。

だがそうのんびりもしていられない。雨も降りだした。
拠点へ帰り、ショベルで周囲の土を叩いて歩きやすくしていく。
ここからが、頑張りどころだ。