Eno.360 シマシマ・ホルンフェルスベルグ

■ しおづけのおにく

うみの水が上がってきました。足もとがズルズルになってしまって大へんです。
そろそろ7日目になります。
さいしょに見つけたボトルメッセージにかいてあるとおりでした。
このままこのしまにいたら、つぎに目がさめたときはうみの中です。

しまをだっしゅつしないといけないので、しまのみんなのぶんのだっしゅつキットを、みんなでつくっています。
あたしはじぶんのだけつくってしまいました。
ほぞんしょくやベルトなど、よういしづらいものがいっぱいです。
まにあうかわかりません。

とおくのほうから、なにかの音がきこえてきます。
あれが、メッセージにかいてあったふねなのかもしれません。
きづいてもらうためにみんなでアピールすることにしました。
アヒルちゃんをいっぱいながします。
このおもいがとどきますように。

***

「──おや。シマシマ、日記をつけているのか?」


「何、日記をどう書くべきかわからないからアドバイスがほしいって?
 日記なんてもんは自由に書くものだろうに。
 まぁいい、中身を見せてくれ。どれどれ……」



***

「なるほどなぁ。今日の出来事について書いたとはいえ、どうも他人のことばっかりだ。
 自分自身のことをこれっぽっちも書けていないじゃないか。
 うーん、そうだな……」


「なるべく自分を中心に書け」


「ああ、自分から見える範囲だけで構わない」


「……大人になっても、子供の頃の出来事を思い出す時があるんだ。
 今でもだ。いつか誰かと見た美しい景色、誰かと食べたサンドイッチを。
 具材は……、ええと、なんだったっけな。……まぁいいか」


「でもなぁ。私がその景色を見て何を感じていたのか、これがだんだん思い出せなくなってくる。
 正確には捏造──都合のいいようにねじ曲げられてしまうわけだ。
 美化されて──キレイで面白いものにしたがるんだな、何故か」


「余計な手は加えなくていい」


「今この瞬間だ。
 見えたもの、思っている事、ありのままを書くといい」


「お前の好きな石ころと一緒だよ」


「ふたつとして同じものはないのだから」



***