Eno.589 小比類巻

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遠くから聞こえる汽笛が、夜空に咲く花火が、
私たちの修学旅行が終わりに近付いていることを告げているようだった。











それが近付けば必然的に思う。
帰ってどうするんだろう。私。














自分の冷たさに気付いて
自分の残酷さに気付いて
昔、そして今誰かを傷付けてる理由を知っても
私は私でしかいられない。

例えば、誰かが死んでも私は平気な顔で過ごしてる。
例えば、誰かが帰らずとも私は平気な顔で過ごしてる。

例えば、誰かを殺しても私は平気な顔で過ごしてる。


笑って、いつも通り。


今まで自分でしか無かったものは、暗い泥を纏って見える。
溶けていくような、崩れていくような。

空っぽみたいな。

















ごめん、そんな事ないって分かってる。
私は私で良いし、私以外である必要も無い。
今まで通り堂々と生きてればそれで良い。
父さんが教えてくれた楽器や釣りも私の好きなもので、役に立ってるし。
今まで生きてきた時間は決して無駄じゃないなんて
分かってるんだけど。



























赤い錆のこびり付いたカッターナイフが
私が何者にもなれないことを示している。