Eno.110 永久の旅人

■ 前夜の記録



++ 6日目/夜/拠点


「人の心を掴むには
 まずは胃袋からって言うでしょ?」


沸騰させた真水に昆布を入れて出汁をとる
肉はそのままだと臭みが残るから香草と一緒に煮込む
灰汁は出すぎるとエグみが出るので程々に取り除いて…

「あとは香辛料とトマトを入れて煮詰めれば…」


カレーのできあがり

「今晩の宴会に併せてご飯も炊いて、みんなで食べましょう
タライが飯盒炊飯の代わりに使えてよかったわ~」


ご飯が炊きあがるまで まだ時間がかかる
出来上がるまでのんびり待とう

(焚き火が爆ぜる音が心地いいわね…)

「…………ん?」


聞き耳を立てていたわけでもないんだけど、みんながいる方向から声が聞こえてきて

『脱出用の船を作った』
『船に乗せる物資が必要だ』
『―――が足りない』

そんなやりとりが聞こえてきて

「私の出番が来たようね」


喜び勇んで物資の補給を名乗り出たものの、実は ほぼほぼ出揃っていて、残りは革の加工とベルトを作る生産業だけだった…なんて、記録に残すには恥ずかしすぎる話よね

「ふふ、それも私らしいか」


刻は満ちた
この島の生活も、終焉を迎える

(船に乗って、
 みんな帰るべき場所へ帰っていく)

(私はまた、独り…)


脱出後のことを考えると、ちょっぴり寂しくなる
別れはいつか必ず来るものだけど…

『マリーお姉さん』

私をその名前で呼ぶのは

「アヤノちゃん…」

「どうかしたの?」



私が大切にしていた人