■ 記録/15D-16
──
この島で得た汚れた紙に、
この島で得た、インクが変色した筆記具を使い、
数枚に渡り、整然とした文字がびっしり並んでいる。
時折箇条書きにしたり、簡単な図を描いたり、
空いたスペースをすべて埋めるように。
これは、管理番号TK15D-16として──
学んできたこと。おこなってきたこと。
考えたこと。知っていること。
好きだったこと。やりたかったこと……
──それらを思い浮かぶ限り、書き出したものだ。
そこには確かに自身の居場所があって、
そこには確かに、僅かでも、生きる意味があった。
たとえ何もかもが変化しないと知っていたとしても、
たとえ何もかもが、終わっていると知っていたとしても。
嫌いじゃなかったんだ。
絶望なんてしてなかった。
それでも、憧れに触れてみたくて。
滅びた街に降り立った。
廃棄物排出口を使えば、簡単だった。
こんなに近くに煌びやかだった街の残骸があって。
いつも小さな窓から見ていた風景に、初めて触れる。
原型を留めない道を歩いた。
──簡易ヘルメットを抜けて、悪い空気が入ってくる。
──息が苦しい。
柱様のものが並び立っていて、壊れた建物があって。
写真で見た昔の面影は、確かにあった。
──腕の、脚の皮膚が、灼けるような感覚。
──外に出るにはもっとちゃんとした防護服がいる。
──だけど、外出は禁止されているから。
……壊れて放置された、錆びた探査船があった。
陸上のものも水上用も、ひとしく探査船と呼んだ。
痺れはじめた手で扉を掴んで外し、投げ捨てて、中へ入った。
正体不明の塵がどこにでもたくさん積もっていて、
操縦席に倒れ込むと、それがぶわっと舞い上がって。
ぼやけた視界の中、体の上にゆっくり降り注ぐのが見えた。
──絶望なんてしてなかった。
何もかも終わりだって、知っていても。
何もかもを嫌いじゃなかった。
そこには確かに、俺の居場所があったんだ。
──せめて、忘れないように。
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