■ 消せない想い
一人、誰も居ない漂着船の中で考え込む時間があった。
トワルと話して別れた後。海を散歩する前の日の出来事。
「(……本当のおれは、どうしたいんだ)」
戦争へと向かうか、好きなものの為に生きるか。
前者を選ぶとしても、心持ちを変えるだけで
現実は何か変わるだろうか。
──もしも、戦争に行った上で
生きて帰って来れる可能性があるとしたら?
「(いや…… 無理だ)」
過去に自分で言った台詞を思い出す。
戦場に出たら、優しさは枷なのだと。
相手に情けをかけるような、優しい者から死んでいくのだと。
この島で過ごすうちに、本来の自分が持つ性質には
嫌でも気付かされてしまった。
情を持たない冷酷な人間のふりをするのも限界がある。
お互い様になれないのなら、他に自分が選ぶべき道は。
──大切にしてほしいよ。ミツくんの、そのやさしさ。
──……少なくとも、
僕は……そうしてくれたら嬉しい、けど
頭の中で、何度も反芻する台詞。受け取った大切な言葉。

「おれが、一番大切にしたいものは……」
答えが出ないまま、長い長い夜が更けていく。