Eno.36 加密爾列

■ 消せない想い

一人、誰も居ない漂着船の中で考え込む時間があった。
トワルと話して別れた後。海を散歩する前の日の出来事。


「(……本当のおれは、どうしたいんだ)」


戦争へと向かうか、好きなものの為に生きるか。
前者を選ぶとしても、心持ちを変えるだけで
現実は何か変わるだろうか。

──もしも、戦争に行った上で
生きて帰って来れる可能性があるとしたら?


「(いや…… 無理だ)」


過去に自分で言った台詞を思い出す。
戦場に出たら、優しさは枷なのだと。
相手に情けをかけるような、優しい者から死んでいくのだと。

この島で過ごすうちに、本来の自分が持つ性質には
嫌でも気付かされてしまった。
情を持たない冷酷な人間のふりをするのも限界がある。

お互い様になれないのなら、他に自分が選ぶべき道は。

 ──大切にしてほしいよ。ミツくんの、そのやさしさ。

 ──……少なくとも、
    僕は……そうしてくれたら嬉しい、けど


頭の中で、何度も反芻する台詞。受け取った大切な言葉。


「おれが、一番大切にしたいものは……」


答えが出ないまま、長い長い夜が更けていく。