■ 陸軍中尉遭難記録 其の玖
ついに船が完成した。最後の時にこれに乗っていれば、この島からの脱出は叶う。皆も浮かれている、見たことも聞いたこともない料理が次々に振る舞われた。ラーメンやピザ、彼にとっては少々食べづらかったが、それでも食べたことのない美味だった。

いやあ、改めて見るとすごいでありますね、この船。
元海賊船の乗組員だったフォグが造ったこの船。なるほどプロの仕事、これならあの嵐だってものともせずに航海ができそうだ。他のメンバーの力も合わせれば、どこへだって行けるだろう。
そう、どこへだって。自分のいた世界とは違う世界にだって。

………
それを考えていないわけではない。祖国には帰らないといけない、でも皆と別れるのは寂しい。ここに来る前には意識していなかった、心の柔い部分。
どうせ死んだ扱いになっている、それに自分1人がいなくとも大局には影響しない。そう思っても、どうしても帰りたい自分がいる。そして同時に、皆とさまざまな世界を旅したい自分がいる。

…決めなければいけない、でありますね。
決断の時は近い。