Eno.570 奏 スネ

■ 見つけた

星の記憶なんてものがまさか作られるなんて思ってなかった。
あまりにファンタジーな部分のある島だとは考えてたけど、
ここがそんな意思ある海が住まう世界とか。

空やんと巡ちゃんの手の込んだ創作かな〜って疑いもしたけど、
あんな目の前でやられてしまったら疑えないなって。
むしろ信じてしまったほうが楽しめると気づいてしまった。

……この島だけの出来事で、終わらせていいのだろうか。

あの話をしている最中に思ったこと。
うちらは最初に拾った手紙を信じるならば、
7日目には救助が来るかも知れない。

それが本当ならばうちらの遭難も終わり、
いつかは……ただの思い出へと変わってしまうんだろうなって。
きっと10年後の同窓会では「あのときは大変だったね」と、
笑いながら言い合ってるのかもしれない。

星の記憶、それらを記したノートを見る。
この島でいろんなことがあったと振り返る。

遭難直後のみなの混乱っぷり。
島を探検して絵に書いたようなサバイバル生活。
泣いたり笑ったり馬鹿騒ぎして生き抜く日々。

うち自身もいろいろあった。

去年の文化祭のころから淡く抱いてた思いが強まったこと。
自分だけが取り残されてる気がして焦っていたこと。
なにもない、なんにも見出せてないことが、辛かったこと。

それらも今は前向きな方へと切り替わってる。

隣に立ちたい人がいる。
みな、未来や翔らに迷ってるのだとわかってる。
うちは、このままでもいいんだと言ってくれる友がいる。

忘れたくないな、いつまでも、覚えていたいなと、
毎日のように砂浜で聞こえる歌を聴きながら、ただ想う。

うん、そうだ。
帰ったら、みなで帰れたら、うちは漂流記を書こう。

昔読んだことのある『ロビンソン・クルーソー』、
内容はもうほとんど覚えてはいないけれども、
あれは実話をもとにしたと母から聞いてる。

どんなふうに書いたらいいかはわからない、
けど小説家の母親に聞けば教えてくれるだろう。
本にするのは編集者の父親に頼んでみよう。

今までは両親のやってることに興味はなかった、
だって関係ないと思っていたからだ。

でも今は違う。
はっきりとやりたいことができて、
何がしたいかも見えてきた。

うちは帰ったら、みなに話を聞いて漂流記としてまとめたい。
ただの思い出として風化しないよう、
大事な形として残しておきたい。

いつでも、この島へと気持ちだけでも帰ってこれるように。
ここで、みなと過ごした生活を、仲間を、ずっと忘れないために。

辛いことも苦しいこともあった。
それでも、楽しいことも嬉しいこともあった。
うちは、自分を見つけることができた。

ううん、いろんなものを、見つけることができたよ。