Eno.334 アップルミント

■ 星の支配者

 
オリーブの木へ、人間の耳が拾えぬ音を渡す。

〝───どうか我々が旅立つことを、お許しください。〟


時という概念を持たず、季節だけで年月を知る生命。
それが植物という存在だ。

退屈など感じる筈も無い。
が、しかし。
変化はあるべきだ。

空へ向かって伸び続ける木。
朽ち果て、新たな生命の糧となる葉。

変化こそ、“大いなる自然”が生きている証拠である。

たとえその変化が、人にとって受け入れ難くとも。
人が大いなる者たちに逆らうことなど、不可能だ。

無論、技術的には可能であった。

しかし───人は欲してしまう。

分かり合えなかった。

通じ合えなかった。

国家の枠組みを越えた星の運営は失敗に終わり、人間は淘汰された。




          植物
人がいない世界で、彼らは今日も穏やかな日々を送っている。




大地を支配するのは、いつだって欲を持たぬ者たちだ。