■ 明智桜太郎の事件簿5 彼女が『 』になった理由

「その謎のメモの存在で、警察も調査が却って難航した。女が犯人、と言うことなのだろうが、果たしてそんなことが可能だろうか……?三十名程を殺害できるか?一人で?協力者がいた?そもそもこのメモは正しいのか?他のメモは存在しないのは何故か?」

「……七件島についても、あらゆる事が掘り返された。この島は嘗て日英同盟の折、英国の人間に一時譲渡されたという説があるという。真偽はどうにしろ、英国からの植生も持ち込まれたものによって変わっているし、
島に存在する洋館もその名残と言えるだろう。
そこにいた英国人の記録はあまり残されていないのだが、
近代に、一つだけ。
当時の国のお偉いさんのご子息が、そこにいた英国人の女性と関係を持ち、子を孕ませていた。当然、結婚もしよう、という話になっていたようだ。
彼女自身がどのような人物だったかと言えば、ハーブ類や医学に精通した女性だったらしい。
近隣の漁村に、そうした薬やハーブティーを譲っていた記録もあった。
彼女は神の使いのようだ、と村人たちに言われた時、
「我が国では、自分のようなものは『 』という」、と返したという。
大変、良好な関係を築いていたようだな。
……ただ、ご存じの通り、英国との関係は良好とはいえず、ある時期に悪化を始める。
その存在が、あるいは。そのご子息が軍に徴用されたならば、
都合が、悪くなったのではないだろうか?
その女性は、そのぐらいの時期に足跡が辿れなくなる。国外へ出た形跡も、ない」

「時期を同じくして、近隣の漁村で、一人の罪人の女が、海に身を投げ入れられたという。罪状は"薬物の売買"……
当時の村人の日誌によれば、その女は身重だったという。
」

「彼女の記録はあまりにも失われている。きっと、焼いたり、捨てたり、墨を塗らせたんだろう。――歴史から喪われた彼女が、ありもしない罪を被せられて殺され、今も七件島に怨念を以て、佇んでいるとしたら。」

「彼女はまだ、あの島の主にして、数百年を生きる――『魔女』なのかもしれない。
それが、彼女が魔女と呼ばれるようになった所以だ」

「だが、いくらありえざる事を俎上に載せるのが俺だとして。探偵なのだから、正しい犯人Xを導き出さなければならない。 魔女が現れ、犯行を行い、忽然と姿を消したとするには、あまりに状況は不可思議すぎる。
殺害されたものたちは、あり得ない死に方をしているものもいた。
それらは、明らかに準備に異常な時間がかかるものもあった。
だが、それで俺は――犯人がわかった」