■ 社務記録13
「おぬし、良い人はおらんのか。」
…なによ、突然。
あなたがそんなこと言うの?
「他に誰が言うんじゃ。おぬしの父親か。」
お父さんは、そういうこと言わないけど…。
「じゃったらわしが言うしかなかろう。」
…そんな人居ないの、あなたならわかってるでしょ。
「まぁそうじゃのう。
村のおなご衆の事なぞ、わかり過ぎる程にわかっとるわ。」
「じゃがのう…街まで働きに出て、なんの出会いも無かったんか?」
何もありませんでしたよ。
女の人だけの会社だったって知ってるでしょ。
「社内恋愛に限定はしとらんのじゃが。」
忙しくてそれどころじゃなかったわ。
…要領が悪いの、知ってるでしょ。
「そうやってすぐ自分を……いやまぁ、今はそっちの話は良いわい。」
大体、街で良い人と出会ってたって。
こんな田舎に来てくれる人なんて、そうそう居ないでしょ。
「まぁのう…ちと田舎過ぎるからのう、この辺は。」
「いやいや、そうじゃのうて。
おぬしが嫁いだって良いんじゃぞ?」
何言ってるの。
神社、放っておける訳、無いでしょ。
「まぁのう…神社を空けられるのも困るんじゃが。」
「いやいや、そうじゃのうて。
それは、ほら、わしの方で如何にかこうにか、のう?」
これ以上、自分の仕事を増やす気なの?
いっつもぼやいてるのに。
「まぁのう…いやいや、そうじゃのうて。」
「はぁ…。おぬしは如何にも、変な所で賢しいのう。」
変じゃないところは、頭悪いですからね。
「何を言っとるんじゃ、ばかもの。」
「わしはのう。おぬしにも、幸せになって欲しいだけじゃよ。」
「"さよならだけが人生だ"、じゃ。」
「わしから見れば、短いおぬしの人生じゃ。
せめて、幸せになって欲しいと思うのは、おかしいことかのう。」
………。
「…そうじゃのう。おぬしがもし、"良い人"に出会えたなら。」
「あの護符を一枚、持たせてやると良いぞ。」
…護符って、あの玩具みたいなやつ?
「そう、わしがデザインした、あのイケてる護符じゃ。」
……あんなの、受け取る人、居るのかしら。
「あんなのとはなんじゃい。」
「…ふ。まぁ、頭の片隅に憶えて置けば良い。」
「なぁに。"悪い様"にはせんよ。」