■ *『1000年の追憶へ』
戦争は好きになれない。
誰かが積み上げて来たものを、跡形もなく焼き尽くしてしまうから。
けど、何かの為に立ち上がろうとするヒトは好きだ。
星そのものは好きだ。
いつの時代も、空を見上げれば変わらずそこにあるから。
けど、願いを背負わされる星は少し不憫だと思う。
引き伸ばしは好きになれない。
何事にも限りがあるから、限られたその時を大切にしようと思える、はずだから。
けど、いつか終わりが来る事に寂しさを感じないわけじゃない。
世界のおおよそ全てが好きだ。
幾つもの偶然で作り上げられたその形と、それを構成する全てのものが。
けど、自分がその中に居たいわけじゃない。
世界は好きなものと、好きになれないものでできている。
僕は好きになれないものだって、ひとつでも欠ければ今は無い。
だから総合的にはそれを含めて好きな世界だ、と思っているから。
手の届く限りの全てを集めて、眺めて、保存して。
その全てが、確かにあった事が、いつかずっと先の未来まで届くように。
それが僕の生き方で、僕のやりたい事で、いつか僕の功績になるもの。
きっと生きている内は何も成せない僕が、いつかの未来に唯一成し遂げられる事。
僕は死にたくはない。
痛いのは嫌だし、苦しいのは嫌だし、まだ見ていたいものがある。
けど、永遠が欲しいとは、思わないし。
自分のほかに何も残っていない世界を、たった一人で生きるくらいなら。
そう思っていたし、今でも大体そう思ってる。
ほんの少し、部分的に、考え方を変えただけ。
死ねなかったなら、生きられるだけ生きてみよう。
死ぬ可能性と向き合った上で、生きてる限りは、それでも死んでたまるかと思い続けよう。
どうにも僕はまだ死にたくはないらしい、し。それに。
それが誰かの何かになる、かもしれないから。
僕は勝算の無い戦いなんてしない。
つまり、元々勝ち目は……理論的には可能、では、あった。多分。
それをもう少し、可能な限り現実的に、理想に近付けるだけ。
900年と少し、そのもう少し先まで。
1000年を見届ける事が、叶うように。
魔女って種の寿命は、保有する魔力の量に左右される。
長い時を経れば経るほど燃費は悪くなるし、
消耗すればするだけ死が近付く。けれども、
この種族はどうにも愛情深い、或いは一つのものに執着しがちらしい。
だからその大半が何かの為に戦いに出て、そして死んでいく。
そして、それはたいへんに名誉な事だった。
僕はそれが嫌で嫌で仕方なかった。
だって、おおよそ好きなもので構成された舞台の上に
突然引き摺り出されて注目を集める事になるなんて、冗談じゃない。
その上何かの間違いで生きて帰ろうものなら最悪だ。
絶対にそっとしておいてくれない。だから死んだ方が幾らかマシだ。
そう思っていた、けど。
そうもいかなくなったなら、それなりの対策を考えておかないとな。
つまりは。
全力で引きこもる事にしようってこと。これからも、絶対に。