システムログ

■ *『エピローグ』


どうにかと水を確保しては飲んで。 いくらかの命を確保しては食べて。そして脱出の準備を整えて。
――そうして、この島に流れ着いてから八度目の朝日を船の上で迎えて少したった頃。

――そこの不審船、止まりなァ!!


突如響く、威勢の良い女性の大声。
声の方向には海賊船めいた船影と、それを所有しているであろう女海賊の風防。

「テメェらもこの辺の宝を狙ってンのかァ?!
狙いが被るってンなら、アタシらも容赦は……え、違う??」


やむなく船を近づけ事情を説明すれば、途端に敵意を失くす女海賊。

「――なんでいそういうこったい。そら難儀だったなア。
こんなクソったれた海でイチから船出まで漕ぎ着けるたあ、中々やるじゃないか」

「アタシらはこの辺で宝漁ってるしがない賊さね。
流れ着いたおたくなら分かるだろ?此処は宝の海なのさ」


機嫌のいい女海賊は気さくに語る。

「……クソったれなんて言うたが、この海はいい海だよ。
おたくらも感じただろ?この海には、いろんなモンが溶け込んでるンだ」

「この海にいる限り、"知らないはずのものを生み出せる"。
この海にいる限り、"出来ないはずのことを遂げられる"」

「この海は不可能のない海で、自由な海さ。
……だから、ロクなもんもねえのに屯してる輩が多いンだよ」


"このアタシみたいにな!"と、女海賊は高笑いをして。

「与太話が過ぎちまった。
今は海が"開いてる"から、こっから出たきゃ世界を念じて進みゃいい」

「……え、襲わないのかって?
同業者ならともかく、漂流者襲ったって旨味なんかねえって。
分かったら、大人しく拾った命を大事にするンだな。ははは!」


女海賊が再度笑えば、海賊船は通り過ぎていく。


窮地に立たされたはずのあなたは、いまこうして船旅をしている。

その過程にはどんなドラマがあったのだろうか?
何を喪い、何を得たのか? それらは全て、あなただけが知っている。


――あなたの航海は始まったばかりだ。