Eno.139 薄井すもも

■ わたしたちのむじんとう

絵本『ぼくたちのむじんとう』
海難事故で無人島に流れ着いた少年少女たちが、弱音を吐きながらも、力を合わせ、危機を乗り越えていく。
眩しい砂浜を、鬱蒼とした密林を、険しい岩の洞窟を探検し、自分たちの力で家に帰るまでの物語。
最後のページは、ぼくたちのむじんとう、と書かれた旗。
彼らが上着と木の枝を組み合わせて、島から脱出する前に立てていったものだ。
その旗の立つ光景で、本は締めくくられている。


それが、薄井すももの、憧れていた物語。

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『くじらごう』は、皆で集めた材料により、『スーパーくじらごう』へと成長した。
リーダーによる進水式を終え、鯨の名を冠した小舟の出来栄えに感動する三人。

しかし、船旅は船だけではできない。干し肉一つでは準備が足りなかった。
どんどん潮が満ちてくる中、残り少ない時間の中で手を尽くす。
倉庫に保管してあった料理も、ずっと持っていた非常食のお菓子も皆で食べて。そして。

島には木製の鯨、光を放つ灯台ひとつと、いくつかの狼煙の煙。
三人の冒険の先は、果たして。