Eno.451 マギサ

■ 無題

……もう、気を抜くと意識を飛ばしちまいそうじゃ。
ここで倒れたら、また連中が心配しちまうよ。

故にあたしは、拠点を出て、砂浜へ足を運んだ。

ほとんど海に沈んでいた。
最初に見た時の面影は、既に無い。
それでもまだ、爪先が浸かる程度の深さではあるが。

――……、……サ……



……?
今、何か……。

――……ギ……、サ……!



……だんだん、聞こえてきた〝声〟。

――マギサ!!



それは、紛れも無く〝私〟の〝声〟だった。

「……〝私〟……?」


――良かった、やっとまた話せるようになりました!



一体いつ以来だろうか?
久しぶりに〝私〟の声を聞いた、気がする。

「……、……今まで、なんともなかったかい……?」



側から見れば、独り言を呟いているだろう。
その姿を、誰も見ていないと、……今だけは、信じさせておくれ。

――はい。
繋がりを封じられてしまっただけで、私自身はなんともないです。


「……そうかい」



どうやら無事らしい、と分かって。
ほんの少しだけ、安心したよ。
絶対口には出さぬが。

――マギサは大丈夫ですか?
聞きたい事がたくさんあるんです。



大丈夫、と言い返したかった。
だが、どうやら……

「……悪いが……後日にしておくれ」



時間がそれを、許してはくれぬようじゃ……。

――マギサ……?



「あたしゃもう……〝寝る〟よ。
 些か……疲れ果てた。
 ……後は、……任せたよ――シズク





それを最後に、あたしの意識は沈んでいった。