■ 無題
……もう、気を抜くと意識を飛ばしちまいそうじゃ。
ここで倒れたら、また連中が心配しちまうよ。
故にあたしは、拠点を出て、砂浜へ足を運んだ。
ほとんど海に沈んでいた。
最初に見た時の面影は、既に無い。
それでもまだ、爪先が浸かる程度の深さではあるが。

――……、……サ……
……?
今、何か……。

――……ギ……、サ……!
……だんだん、聞こえてきた〝声〟。

――マギサ!!
それは、紛れも無く〝私〟の〝声〟だった。

「……〝私〟……?」

――良かった、やっとまた話せるようになりました!
一体いつ以来だろうか?
久しぶりに〝私〟の声を聞いた、気がする。

「……、……今まで、なんともなかったかい……?」
側から見れば、独り言を呟いているだろう。
その姿を、誰も見ていないと、……今だけは、信じさせておくれ。

――はい。
繋がりを封じられてしまっただけで、私自身はなんともないです。

「……そうかい」
どうやら無事らしい、と分かって。
ほんの少しだけ、安心したよ。
絶対口には出さぬが。

――マギサは大丈夫ですか?
聞きたい事がたくさんあるんです。
大丈夫、と言い返したかった。
だが、どうやら……

「……悪いが……後日にしておくれ」
時間がそれを、許してはくれぬようじゃ……。

――マギサ……?

「あたしゃもう……〝寝る〟よ。
些か……疲れ果てた。
……後は、……任せたよ――シズク」
それを最後に、あたしの意識は沈んでいった。