■ プトリさんの深遠なる思慮 10
今でもあの日々のことを思い出す。
鮮明に、幾度となく。
この手の中にある錆びた指輪がそうであるように、
思い出は引き出しから取り出して触れるたび形が変わって、
事実だと思い込んでいるものは、
きっととうの昔に原型をなくしているのだろう。
隣国の機嫌を窺い、相も変わらず機嫌を窺う家臣や、
隙あらば引きずり落とそうとしてくる奸臣をあしらう日常のかたわらで、
私は揺れる海面に目をやっては、
戻らないあの日々に、いつまでも焦がれ続けている。